華栄の丘

書籍名:華栄の丘
著者名:宮城谷昌光
出版社:文芸春秋 文庫

感想:
出っ歯で太鼓腹
そんな一見コミカルで憎めない形相の人。
華元

彼が今回の主人公。
不遇な立場でも文句を言わず
分をわきまえ 耐えて
人にたいして良識と礼と優しさをもって接し
人々に愛された人。

その人柄と知能と博識 深い見識をもち
そして良き部下をもち
大出世を成し遂げた。

特に君主と先代の王妃に信頼され
陰謀から彼らを守り抜いた見識はすごい!

また華元自身が命の危険に晒されたときに
どんなことをしても助けると君主が
思ったほどの信頼関係

君主 対 華元
華元 対 部下たち
それぞれの信頼関係。
本当に信頼しきった上下関係。
自分を活かせる上司にめぐりあえるということは
彼にとって最高の幸せなことなんだろうな。

助け出されたときは私も一緒になって
感動して涙・・・。

しかし捕虜になったいきさつでは
言葉というのは 足りないと
とんでもない憎しみを生み 
恨みは命までも奪ってしまうという
恐ろしい教訓だった。


この宮城谷昌光の本を読んでいると
いつも頭に浮かぶのは
人間の分ということ。

いろんな場面で
表立つチャンスがめぐってくるときに
人を押しのけても自分に栄光を引き寄せるのは
やはり分を超えている。

そのとき冷静にみれば
自分よりも 優れた人がいたならば
我をすてて
その人を立てることが出来て
本当に尊敬に値することなんだと思った。

目の前にぶらさがった栄光と名誉と金と・・
それを国のために捨てられるかどうか・・・

だいたいは負けちゃうよね。
私も自信がない。
だから凡人なんだし
分を超えてしまう愚か者なんだな。

彼の生き方のいさぎよいことよ。
あ~読後のさわやかさを
久々味わいました。

「天空の舟」以来です。

この本もぜひお勧めします。


点数:
スリル  ☆☆☆☆★
泣ける  ☆☆☆☆★
ドキドキ ☆☆☆☆★



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